終活に関係する民法が改正
2020年4月1日に「民法の一部を改正する法律」が施行されるのはご存知でしようか。
これは民法のうち「債権関係の規定(契約など)」を中心にしたもので、2017年5月26日に成立したものです。民法は1896年(明治29年)に制定されて以降、債権関係の規定については120年間ほとんど改正されてこなかったのです。
この間に社会経済は大きく変化し、取引が複雑化したことや、高齢化や情報化が進んだこと、さらには多数の判例や解釈が実務に定着ことにより「基本的ルールが見えにくい状況になってきた事」などが改正の背景にある様です。
今回の民法改正は、終活をする方にとっても「知っておくべきもの」となっています。
法務省によれば、今回の民法一部改正は、「取引社会を支える最も基本的な法的基礎である、契約に関する規定を中心」にしたもので、「民法を国民一般に分かり易いものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化する」ものであるとのこと。
今回の民法の大きな改正点
大きな改正点には次の4点があります。
①消滅時効(第166条関係)
業種ごとに異なる短期の時効を廃止し、原則として「知ってから5年」にシンプルに統一
②法定利率(第404条関係)
法定利率を現行の年5%から、年3%に引き下げた上、市中の金利動向に合わせ変動する制度を導入
③保証(第465条6〜9関係)
事業用の融資において、経営者以外の保証人については公証人による意思確認手続を新設
④約款(第548条2〜4関係)
定型約款を契約内容とする旨の表示があれば個別の条項に合意したものとみなすが、信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効と明記。定型約款の一方的変更の要件を整備
の4点が主なものです。
意思能力を有しない者がした法律行為は無効
終活に関係するものとして、今回の民法改正で特に注目しておきたいのは、「意思能力を有しない者がして法律行為は無効」(第3条2関係)とすることが明文化されたことです。これまでにも判例上では実際に活用されていたのですが、民法には明文の規定がこれまでなかったものです。
判断能力が低下した高齢者らが不当な不利益を被るのを防ぐことを目的としたものであり、特に高齢者の認知症の増加が背景にあるものと思われます。
65歳以上の高齢者のうち、7人に1人(推計15%)が認知症を発症していると言われ、2025年には5人に1人になるとの予測もあります。超高齢社会に入っている日本においては切迫した課題となっているのです。
このほかにも知っておきたい改正点もありますので、法務省のサイトで確認してみるのも良いでしょう。
※日本石材工業新聞 令和2年2月15日 第2203号 記事より転載